タグ: REST API

  • 動かしていなかったから、漏れていなかっただけ

    動かしていなかったから、漏れていなかっただけ

    問い合わせフォームにボット対策を入れようとして、先に別のことが分かりました。

    いまの作りでは、ブラウザ側にどんな対策を入れても効きません。

    この記事で扱うこと

    送信先のURLが配信されるJavaScriptに入る作りになっていた話と、その直し方です。あわせて、画像の文字を読ませる方式を選ばなかった理由も書きます。

    先頭の6文字が、置き場所を決めていた

    このサイトはNext.jsで作っています。環境変数の名前には、決まりがあります。

    名前 どこから見えるか
    CONTACT_ENDPOINT サーバーだけ
    NEXT_PUBLIC_CONTACT_ENDPOINT ブラウザにも配られる

    名前の先頭に NEXT_PUBLIC_ が付いていると、その値は組み立てのときにJavaScriptの中へ埋め込まれます。訪問者に配られるファイルの一部になる、ということです。

    フォームはブラウザの中で動く部品なので、送信先を知る必要がありました。だから素直に NEXT_PUBLIC_ を付けていました。付けなければ読めないので、それ以外に選びようが無いように見えていました。

    鍵の掛かっていない扉が、隣に並ぶ

    この形だと、送信先のURLはフォームを開かなくても分かります。配られたファイルを開けば書いてあります。

    フォームを通さずに送れる

    見えない入力欄を足しても、送信までの時間を測っても、それらはフォームを使った場合にだけ効きます。

    送信先を直接叩く相手には、そもそも通り道が違うので関係がありません。鍵を掛けた扉の横に、鍵の掛かっていない扉が並んでいる状態でした。

    動かしていなかったから、漏れていなかった

    ここで確認したところ、本番の環境変数は設定されていませんでした。

    フォームは、送信先が無いときは「お問い合わせ先は準備中です」と出す作りにしてあります。つまり公開されてからずっと、フォームは表示されておらず、URLもどこにも出ていませんでした。

    安全だったのではなく、使っていなかっただけ

    結果として何も漏れていませんが、設定を入れた瞬間に漏れる形のまま置いてありました。

    この種の問題は「まだ起きていない」と「起きない」の区別が付きにくく、動かし始めた日にまとめて効いてきます。

    ついでに言うと、フォームが出ていなかったこと自体も問題でした。問い合わせ先として案内していた場所が、ずっと準備中だったということになります。

    自分のサイトに窓口を作る

    直し方は、間に1枚挟むことでした。

    前 後
    送信先 ブラウザ → 外部サービス ブラウザ → 自分のサイト → 外部サービス
    URLの在り処 配られるJavaScript サーバーだけが持つ
    判定の場所 ブラウザ(迂回できる) サーバー(迂回できない)

    ブラウザから見えるのは /api/contact だけになります。ここを直接叩くことはできますが、叩いた先で何を見ているかは分かりません。

    画像の文字を読ませる方式は、入れなかった

    ボット対策というと、ゆがんだ文字や、信号機の写真を選ばせるものが思い浮かびます。今回は入れていません。

    読みにくい文字は、機械より先に人が脱落する

    問い合わせは、そもそも件数が多くありません。1日に何百件も来るものではない。

    それに対して、1件取りこぼす損のほうが大きいと考えました。迷惑な送信を100件止める価値より、相談しようとした人が1人あきらめる損のほうが重い、という判断です。

    人がやらないことを、3つ見る

    代わりに置いたのは、訪問者の手間が一切増えない3つです。

    見ること 人がやらない理由
    見えない欄が埋まっている 画面に出ていないので、触りようがない
    開いてすぐ送っている 3秒で文章は書けない
    短時間に何度も送っている 同じ相談を10分に4回はしない

    どれも、正しく使っている人には何も起きません。止めるために何かをさせるのではなく、やっていないことを確認する形にしています。

    見えない欄の名前を、慎重に決めた

    ひとつだけ、注意が必要な部分があります。見えない欄の名前です。

    この欄を name や url のような一般的な名前にすると、ブラウザやパスワード管理ソフトの自動入力が、画面に出ていなくても勝手に埋めることがあります。

    人の送信が、黙って捨てられる

    この欄が埋まっている送信は、機械とみなして捨てます。しかも成功したように見せて捨てます。理由を返すと、次からその欄を避ければ通ると分かってしまうからです。

    つまり自動入力に埋められた人は、送信したつもりで、何も届いていない状態になります。これがこの仕組みの一番の失敗です。

    自動入力が狙わない名前にしたうえで、キーボードの移動先からも読み上げの対象からも外しています。

    回数の数え方には、限界がある

    正直に書いておくと、短時間の回数を数える部分は完全ではありません。

    このサイトのサーバー側の処理は、必要なときに起動して、しばらくすると消えます。数えた記録は共有されず、消えるときに一緒に無くなります。厳密には数えられません。

    それでも、続けて叩いてくる相手は同じ実体に当たりやすいので、一番困る「短時間に何百件」は止まります。正確さが要るようになったら、外に記録を置くことになります。いまの流量でそこまで持つ必要は無いと判断しました。

    今回の学び

    まず、名前の先頭6文字が、置き場所を決めていたということ。NEXT_PUBLIC_ は便利な省略ではなく、「これは配る」という宣言でした。付けなければ読めないから付ける、では順番が逆でした。

    次に、ブラウザ側の判定は、通り道が1本のときにだけ効くこと。もう1本、鍵の掛からない道が並んでいれば、そちらが使われます。対策を足す前に、道が何本あるかを数える必要がありました。

    そして、止めるために手間を増やさないこと。問い合わせのように件数が少ないものでは、止めた数より取りこぼした数のほうが重くなります。人がやらないことを確認するだけなら、正しく使う人には何も起きませんでした。

  • 細かく刻んでも直らなかった、経路を変えたら一度で通った

    細かく刻んでも直らなかった、経路を変えたら一度で通った

    記事のアイキャッチ画像を、CMSへ入れる作業をしていました。画像を文字列に変換して、少しずつ送り込む方法です。

    ところが、ときどき壊れます。送った文字列と、届いた文字列が違う。

    対処として分割をどんどん細かくしていきました。7000字で壊れたので2500字にし、それでも壊れたので1750字にしました。1750字なら通る。通ったのですが、1枚の画像を送るのに17回かかる計算になりました。

    この記事で扱うこと

    失敗する手順を細かく刻んで通した話と、そのあと経路そのものを変えたら一度で終わった話です。同じ作業が66回から1回になりました。

    細かくすれば通る、までは正しかった

    画像をそのまま送れないので、いったん文字の並びに変換します。変換すると元の1.3倍くらいの長さになり、1枚で2万8千字ほどになりました。

    これを一度に送ると壊れます。どこで壊れたのかを知るために、分割するたびに短い検査用の値を一緒に送って、届いた側で計算し直して突き合わせました。合わなければその回だけやり直せます。

    1回あたりの長さ 結果
    7000字 不一致
    2500字 不一致
    1750字 4回連続で一致

    1750字なら安定して通ります。これで「送れる方法」は確立しました。

    安定はしたが、量が減ったわけではない

    1枚17回。今回は4枚必要だったので、66回の往復になります。

    しかも毎回、検査用の値を計算して突き合わせます。1回でも合わなければ、その回をやり直します。作業として成立してはいますが、成立させるために手間が積み上がっている状態でした。

    細かくするのは、経路を疑っていない証拠だった

    ここで手が止まりました。1750字という数字に、根拠が無いことに気づいたからです。

    7000で駄目、2500で駄目、1750で通った。通ったという事実しかありません。なぜ1750なら大丈夫なのかは説明できていません。次に別の環境で同じことをしたら、また試して探すことになります。

    そして、そもそもの前提を疑っていませんでした。「この経路で送る」ことは決まったこととして扱い、その中でどう工夫するかだけを考えていました。

    ファイルをファイルのまま渡す

    やり直したのは、経路の側です。

    文字列に変換して少しずつ流し込むのではなく、画像ファイルをそのままCMSのアップロード欄へ渡しました。ブラウザがファイルを受け取る仕組みは元からあり、CMSにもファイルを受け取る画面が元からあります。使っていなかっただけです。

    文字列に変換して送る ファイルのまま渡す
    やり取りの回数 66回 1回
    送る量 元の約1.3倍 元のまま
    壊れたときの検知 自分で検査値を付ける 仕組みの側が持っている
    画像の劣化 途中で形式を変換していた 無し

    4枚まとめて、約1.9MBを一度で渡して終わりました。分割そのものが不要になったので、検査値の計算も、やり直しの判断も全部消えました。

    工夫が消えるのは、良い兆候

    1750字という調整も、検査値を突き合わせる仕組みも、それ自体は正しく動いていました。役目を終えて消えたのではなく、最初から必要の無い経路を選んでいたということです。

    手順の途中に自作の工夫が積み上がってきたら、それは経路を疑う合図でした。

    細かく刻む対処が要るときもある

    もちろん、分割が悪いわけではありません。

    経路がひとつしか無いなら、その中で安定する大きさを探すのは正しい対処です。今回もそれで一度は通しました。壊れたことに気づけるようにした部分は、経路を変えたあとも考え方として残ります。

    問題は、そこで止まったことです。「通す方法が見つかった」時点で満足してしまい、「そもそもこの経路でよかったのか」を考えませんでした。

    今回の学び

    まず、通った理由を説明できない手順は、まだ解けていないということ。1750字で通ったのは事実ですが、なぜ通るのかは分かっていません。説明できない数字が手順に残っているとき、それは運用でごまかしている合図でした。

    次に、工夫が積み上がるほど、前提を疑いにくくなること。分割の仕組みと検査の仕組みを自分で作った後だと、その経路を捨てる判断はしにくくなります。手間をかけたものほど、使い続ける理由になってしまいます。

    そして、「どうやってうまくやるか」の前に「この道でいいのか」を1回置くこと。今回は66回を1回にしました。差が出たのは工夫の質ではなく、経路の選び方でした。

  • 長さが合っているのに、中身が壊れていた

    長さが合っているのに、中身が壊れていた

    作った画像を、ブラウザ越しにCMSへ上げる必要がありました。一度に送れない大きさだったので、分割して送り、向こう側でつなぎ直しています。

    つなぎ直した長さは、元のデータと1文字も違いませんでした。それでも上がった画像は真っ黒でした。

    この記事で扱うこと

    長さが合っているのに中身が壊れていた原因と、それを見つけるまでに遠回りしたこと。そして分割して送るときに、検証をどこに置くべきかです。

    長さが合うことは、無事の証明にならない

    最初に確認したのは長さでした。送った文字数と受け取った文字数が一致していたので、無事に届いたと判断しました。

    これが間違いです。どこかで1文字増えて、どこかで1文字減れば、長さは変わりません。実際に起きていたのはこれでした。

    確かめやすいことを、確かめたいことの代わりにしていた

    確かめたかったのは「中身が同じか」です。確かめたのは「長さが同じか」でした。長さは数えるだけで済むので、つい代わりに使ってしまいました。

    長さが違えば壊れていると分かりますが、長さが同じでも壊れていないとは言えません。片方向にしか使えない検査を、両方向に使っていました。

    どこで壊れたのかが分からない

    次に困ったのが、壊れた場所の特定です。

    全体をひとつの塊として扱っていたので、「どこかが壊れている」以上のことが分かりません。やり直すとしたら全体をやり直すしかなく、しかも同じ場所でまた壊れるかどうかは運任せになります。

    実際、一度送り直しても同じように壊れました。何が起きているか分からないまま、同じ操作を繰り返していました。

    分割して送るなら、検証も分割する

    やり方を変えました。送る側で分割したときに、各かたまりごとに短い検査値を計算して一緒に渡します。受け取る側は、つなぐ前にその場で照合します。

    全体だけを検証 かたまりごとに検証
    壊れたことに気づける すべて送り終えたあと そのかたまりを受け取った時点
    壊れた場所 分からない そのかたまりだと確定する
    やり直す範囲 全体 そのかたまりだけ

    これに変えた途端、壊れている場所が一発で出ました。しかも受け取り側が拒否を返すので、壊れたまま先へ進むことがなくなります。

    やり直しの範囲は、検証の粒度で決まる

    検証を全体にしか置かないと、失敗も全体になります。細かく検証すれば、失敗も細かくなります。

    分割する目的は「一度に送れないから」でしたが、分割したことの利点は、失敗を小さくできることのほうにありました。

    検証は、転送の「あと」ではなく「一部」にする

    ここが今回の考え方の変化でした。

    最初は、送り終えてから確かめる、という順番で組んでいました。転送と検証が別の工程になっていて、間に「壊れたまま進む余地」があります。

    いまは、検査値が合わないかたまりは受け取らない形にしています。検証は転送の後工程ではなく、転送の一部です。こうすると「受け取れた」と「正しい」が同じ意味になります。

    形式として正しくても、中身が正しいとは限らない

    もうひとつ、別の層の話があります。

    検査値が合って、データが完全に届いた。そこまで確認しても、上がった画像が意図したものかは、まだ分かりません。実際、最初に壊れた画像は「画像ファイルとしては正しい形式」で、開くこともできました。中身が真っ黒だっただけです。

    そこで、送り先に登録する前に、実際に画素を読むようにしました。画面には出さず、いくつかの座標の色を取って、想定した配色になっているかを見ます。真っ黒なら、そこで止まります。

    出す前に、出すものを見る

    「形式として妥当か」と「意味として正しいか」は別の検査です。前者は自動で分かりますが、後者は中身を見に行かないと分かりません。

    面倒に見えますが、やっているのは数点の色を読むだけです。壊れたものを世に出してから気づくコストと比べれば、はるかに安く済みます。

    今回の学び

    まず、長さの一致は、内容の一致ではないこと。確かめやすい指標を、確かめたい事実の代わりに使うと、一致しているのに壊れている状態を見逃します。

    次に、失敗の大きさは、検証をどの粒度に置いたかで決まること。全体にしか検証を置かなければ、やり直しも全体になり、原因も特定できません。分けて送るなら、分けて確かめるべきでした。

    そして、検証は工程の後ろに置くと、壊れたまま進む余地が残ること。転送の一部にしてしまえば、受け取れたことがそのまま正しさの証明になります。順番を変えただけで、確認という作業そのものが要らなくなりました。

    最後に、形式の正しさと意味の正しさは、別々に確かめる必要があること。壊れた画像は画像として開けました。開けることと、意図したものであることは、まったく別の話でした。

  • 自分のブログに記事が投稿できない — WAFの誤検知と、渡し方を変える解決

    自分のブログに記事が投稿できない — WAFの誤検知と、渡し方を変える解決

    自分のブログに、自分で書いた記事が投稿できなくなりました。

    原因はサーバーのWAF(Webアプリケーションファイアウォール)でした。記事の本文に含まれるコードが、攻撃と誤検知されて遮断されていたのです。回避を4種類試して全部失敗し、最後に「内容を変えずに、渡し方を変える」ことで解決しました。

    この記事で扱うこと

    WAFによる誤検知、二分探索を使った原因の特定、実体参照によるすり抜けがなぜ効かないのか、そしてWordPressのインポート機能を使った解決。技術記事を書く人ほど踏みやすい問題です。

    403だけが返ってくる

    記事をWordPressのREST APIに送ると、403が返りました。

    返ってきたもの
    status: 403
    body: (空。WordPressのエラー形式ですらない)

    ここに最初の手がかりがあります。WordPressが権限で拒否する場合、rest_cannot_create のようなコードを含むJSONを返します。中身が空の403は、WordPressに届く前に止められていることを意味します。

    直前まで同じ手順で5本の記事を投稿できていました。コードも認証も変えていません。変えたのは記事の中身だけです。

    どこが引っかかっているのかを探す

    本文は約13,000文字あります。どこが原因かを目で探すのは現実的ではありません。

    そこで二分探索を使いました。本文の前半だけを送ってみて、通れば原因は後半にあり、弾かれれば前半にある。これを繰り返して範囲を半分ずつ狭めていきます。13,000文字なら、14回ほどで場所が特定できます。

    やったこと(ブラウザのコンソールで実行)
    const ok = async (text) => {
      const res = await fetch('/wp-json/wp/v2/posts', {
        method: 'POST',
        credentials: 'same-origin',
        headers: { 'Content-Type': 'application/json', 'X-WP-Nonce': nonce },
        body: JSON.stringify({ title: 'probe', content: text, status: 'draft' })
      });
      return res.status === 201;
    };
    
    let lo = 0, hi = content.length;
    while (hi - lo > 16) {
      const mid = Math.floor((lo + hi) / 2);
      if (await ok(content.slice(0, mid))) lo = mid; else hi = mid;
    }
    console.log(content.slice(lo - 50, hi + 16));   // 境界の前後を表示

    結果はこうでした。

    const HEADING_PATTERN = 正規表現でHTMLの見出しタグを拾う行

    記事の中で紹介していた、見出しを抽出する正規表現です。WAFから見ると、HTMLタグを組み立てようとしている文字列=コード注入の試みに見えます。

    検証用のデータを残さない工夫

    上の関数は、投稿に成功した場合その投稿をすぐゴミ箱に入れています。二分探索は十数回の投稿を行うので、これをやらないと「probe」という記事が大量に残ります。調査のために本番環境を汚さないのは、調べる前に決めておくべきことです。

    すり抜けようとして、4回失敗した

    原因が分かったので、表示を変えずに検知だけ避ける方法を順に試しました。

    試したこと ねらい 結果
    バックスラッシュを数値文字参照に エスケープ記号を消す 失敗
    バッククォートも数値文字参照に コマンド置換に見える形を消す 失敗
    コード部分の記号をすべて数値文字参照に 記号の並びを根本から消す 失敗
    JSONではなくフォーム形式で送る 検査対象から外れることを期待 失敗

    3番目で分かったことが重要でした。WAFは実体参照を元に戻してから判定しています。

    これは考えてみれば当然です。攻撃者も同じ手を使うからです。<script> と書けば通ってしまうWAFには、防御の意味がありません。ブラウザが解釈する前の姿ではなく、解釈した後の姿で判定するのが正しい実装です。

    つまり、表示が同じである限り、エンコードを変えても結果は変わりません。目的が「表示は同じまま通す」ことである以上、この方向に出口はないと分かりました。

    ひとつだけ、通っていた経路があった

    行き詰まったところで、それまでの作業を振り返りました。

    記事の本文をブラウザに渡すために、13,000文字のJSONファイルをWordPressのメディアにアップロードしていました。そのアップロードは、一度も失敗していません。

    中身は同じです。同じ正規表現も、同じコードも入っています。それでも通っていました。

    送り方 中身 結果
    JSONの本文として送る 同じ 403
    フォームの項目として送る 同じ 403
    ファイルとして送る 同じ 成功

    このWAFは、フォームの入力値は検査するが、ファイルの中身は検査していないという動きをしていました。

    これは手抜きではなく、設計上の判断だと思われます。アップロードされるファイルは画像や動画やアーカイブで、中身は任意のバイト列です。すべてを攻撃パターンで検査すれば、正常なファイルが大量に誤検知されます。

    正規の道具が、すでに用意されていた

    ファイルなら通る。ではファイルとして記事を投入する方法はあるか。

    あります。WordPressのインポート機能です。サイト間で記事を引っ越すための仕組みで、記事をWXR(WordPress eXtended RSS)という形式のXMLファイルとして読み込みます。

    article6.xml(抜粋)
    <item>
      <title>読む体験をつくる</title>
      <dc:creator><![CDATA[sakurai_dev]]></dc:creator>
      <content:encoded><![CDATA[ ここに記事本文のHTML ]]></content:encoded>
      <wp:post_name><![CDATA[reading-experience]]></wp:post_name>
      <wp:status><![CDATA[publish]]></wp:status>
      <wp:post_type><![CDATA[post]]></wp:post_type>
      <category domain="category" nicename="tech"><![CDATA[技術系]]></category>
      <category domain="post_tag" nicename="react"><![CDATA[React]]></category>
    </item>

    本文は CDATA という区画に入れます。この中身はXMLとして解釈されないので、HTMLタグをそのまま書けます。

    「ツール → インポート → WordPress」からこのファイルをアップロードすると、記事・カテゴリ・タグがまとめて作られます。一度で通りました。

    抜け道ではない

    この方法は、WAFをだましているわけではありません。WordPressが元から用意している正規の移行手段を、そのまま使っただけです。防御は一切弱めていません。<script>alert(1)</script> は今も遮断されたままです。

    WAFを無効にしなかった理由

    途中、WAFを一時的に無効にして試したことがあります。実際、正規表現の行は通るようになりました。しかし記事全体はまだ弾かれ、<script> も遮断されたままでした。防御が複数の層で構成されていたためです。

    ここで「全部無効にする」という選択もありました。しかし、それはやめました。

    理由は単純です。この問題は今後も繰り返し起きます。技術記事を書く以上、本文にコードが入るのは避けられません。次に何が引っかかるかは予測できません。そのたびにWAFを無効にしていたら、いずれ「戻し忘れ」が起きます。

    作業のたびに防御を外す運用は、いつか必ず外したままになります。人間の注意力に頼る仕組みは、長く続けると必ず破れます。防御を触らずに済む経路が見つかったなら、そちらを選ぶべきです。

    今回の学び

    まず、空の403は「届いていない」という意味だということ。アプリケーションが返すエラーには、たいてい理由が書いてあります。理由の無いエラーは、アプリケーションより手前で止められています。どこを調べるべきかが、これで決まりました。

    次に、手作業で探さないこと。13,000文字から原因の1行を見つけるのに、二分探索なら14回で済みます。目で追えば見落としますし、時間もかかります。範囲を半分ずつ狭める方法は、原因が1か所に絞れる問題ならほぼ常に使えます。

    そして、同じ内容でも、渡し方が変われば結果が変わるということ。今回いちばんの発見はこれでした。中身をどう変形しても通らなかったものが、経路を変えた瞬間に通りました。行き詰まったら、変える対象を「中身」から「経路」に移す。この視点は他の場面でも使えます。

    最後に、防御を弱める解決を最後の手段にすること。無効にすれば即座に解決しますが、それは問題を先送りしているだけです。しかも「一時的に」で済んだためしがありません。遠回りに見えても、防御を維持したまま通る道を探す価値はありました。

  • 書いた記事をWordPressに届けるまで — CORS・nonce・CSSの壁

    書いた記事をWordPressに届けるまで — CORS・nonce・CSSの壁

    「作った」と「届いた」は違う

    ここまでの作業記録を記事にまとめ、HTMLファイルとして書き出しました。CSSも当て、ブラウザで開けばきちんと読める状態になっていました。私はそこで「記事の作成は完了した」と考えていました。

    しかし当然ながら、ファイルがローカルにあるだけでは誰も読めません。記事はブログに載って初めて記事です。成果物の形が合っていても、あるべき場所に届いていなければ完了ではない——今回いちばん効いた教訓はこれでした。

    そこで「HTMLファイル4本を、WordPressの投稿として登録する」という作業が発生します。手作業でコピー&ペーストすれば済む話に見えますが、1本あたり1万文字を超えるHTMLです。しかも今回の環境では、その素朴な方法が使えませんでした。この記事は、その受け渡し経路を作るまでの記録です。

    この記事で扱うこと

    ブラウザの同一オリジンポリシー(CORS)、WordPressのREST APIとnonce、アップロード可能なファイル形式の判定、React(Next.js)で外部HTMLを表示するときのCSS設計、そして公開後の検証方法。どれも「WordPressとNext.jsをつなぐ」構成では避けて通れない話です。

    通せる経路を探す

    状況を整理します。記事のHTMLは手元の作業環境にあり、WordPressの管理画面はブラウザで開いています。この2つの間には直通の道がありません。

    考えられる経路を順に試しました。

    案 やり方 結果
    1 GitHubのファイルURLをブラウザから直接読み込む 失敗。リポジトリが非公開なうえ、別ドメインなのでCORSで弾かれる
    2 作業環境から直接WordPressのAPIを叩く 失敗。作業環境からの外向き通信が制限されている
    3 記事本文をそのままスクリプトに書き込んで実行する 理屈上は可能。ただし4本で約5万文字。引用符やバックスラッシュのエスケープを1文字でも間違えると壊れる
    4 メディアライブラリにファイルをアップロードし、そのURLから読む 最初は失敗。原因の切り分けに時間を使った(後述)

    最終的に採用したのは、この4案のどれでもない5番目の方法でした。ただしそこにたどり着くには、まず1番の失敗が何を意味しているかを理解する必要があります。

    なぜブラウザは他所のデータを読ませないのか

    案1で出たエラーは Failed to fetch でした。ファイルが無いのでも、通信ができないのでもありません。ブラウザが意図的に読み取りを止めています。

    ブラウザには同一オリジンポリシーという原則があります。オリジンとは「プロトコル+ドメイン+ポート」の組のことで、https://cms.kisaku.site と https://github.com は別のオリジンです。原則として、あるオリジンのページで動くJavaScriptは、別のオリジンのデータを読めません。

    なぜそんな制限があるのか。もし制限が無ければ、こういうことが起きます。

    悪意のあるサイトで動くJavaScript(もし制限が無ければ成立してしまう)
    // 訪問者がネットバンクにログイン済みなら、
    // Cookieが一緒に送られて「本人のリクエスト」として通ってしまう
    const res = await fetch('https://bank.example.com/api/balance', {
      credentials: 'include'
    });
    const data = await res.json();   // 残高が読めてしまう
    send_to_attacker(data);

    つまり同一オリジンポリシーは、「ログイン状態を勝手に借用して他所のデータを盗む」ことを防ぐための仕組みです。CORS(Cross-Origin Resource Sharing)は、その原則に対して「このオリジンからなら読ませてよい」とデータの提供側が明示的に許可を出すための仕組みです。許可を出すのは受け取る側ではなく渡す側だという点が重要で、だから今回のように相手がGitHubであれば、こちらの都合で許可を足すことはできません。

    よくある誤解

    「CORSエラーが出た=サーバーが落ちている/URLが間違っている」と考えてしまいがちですが、違います。リクエスト自体はサーバーに届いていて、レスポンスも返ってきています。ブラウザがそれをJavaScriptに渡さないだけです。curl で同じURLを叩くと普通に取得できるのは、curlにはこの制限が無いからです。

    ファイル選択欄を通り道にする

    ここで発想を変えます。ブラウザが「別のオリジンから取ってくる」のを止めるなら、取ってこなければいい。利用者が自分の意思でファイルを選んで渡す経路なら、CORSは関係ありません。

    ファイル選択欄(<input type="file">)がまさにそれです。ここには、セキュリティ上の重要な非対称性があります。

    操作 可否 理由
    JavaScriptからファイルパスを設定する できない できてしまうと、サイト側が勝手に利用者のファイルを盗み出せる
    選ばれたファイルの中身をJavaScriptから読む できる 利用者が明示的に選んだファイルなので、同意があるとみなせる

    この「選ばれた後なら読める」を使います。ポイントは、ファイルをアップロードはしないことです。選択欄に入れるところまでで止め、中身だけをJavaScriptで読み出します。

    WordPress管理画面のコンソールで実行
    // 「メディアを追加」ページのファイル選択欄
    const input = document.getElementById('async-upload');
    const file  = input.files[0];
    
    // アップロードはしない。中身だけ読む。
    // File.text() はテキストとして読み出すメソッド(Promiseを返す)
    const text = await file.text();
    const posts = JSON.parse(text);
    
    console.log(posts.length);          // 4
    console.log(posts[0].content.length); // 11344

    記事4本をJSONの配列にまとめた1つのファイルを用意し、それを選択欄に入れて読み込みました。これで、5万文字のHTMLがブラウザのメモリ上に乗ります。CORSも通信も介在しません。

    この方法の良いところ

    メディアライブラリに中継用ファイルが残りません。「サーバーに置いてから読む」方式だと、用が済んだあとのファイルが公開状態で残り続けます。今回のように一度きりの受け渡しでは、置かずに済ませるほうが後始末が要りません。

    「権限がありません」の正体

    この方法にたどり着く前に、案4(メディアにアップロードしてから読む)を試していました。そこで出たのがこのエラーです。

    このファイルタイプをアップロードする権限がありません。

    管理者としてログインしているのに「権限がありません」と言われる。素直に読むと「WordPressが .txt を受け付けない設定になっている」と解釈したくなります。しかし調べると、WordPressは標準で text/plain を許可しています。話が合いません。

    そこで、同じことをREST API経由で試しました。小さなファイルを作って投げてみます。

    許可されている形式を実際に確かめる
    const form = new FormData();
    form.append('file', new Blob(['hello'], {type: 'text/plain'}), 'test.txt');
    
    const res = await fetch('/wp-json/wp/v2/media', {
      method: 'POST',
      credentials: 'same-origin',
      headers: {'X-WP-Nonce': nonce},
      body: form
    });
    console.log(res.status);   // 201 → 作成成功

    201が返りました。.txt は問題なくアップロードできる。つまりエラーの原因はファイル形式ではありませんでした。管理画面のフォームを操作する過程で、フォームに埋め込まれていたnonceが本来の組み合わせから外れてしまい、WordPressが「この操作は正当な経路から来ていない」と判断していたのです。

    nonceとは何か

    nonceは “number used once” の略で、その操作が正規の画面から、本人の意思で行われたことを示す使い捨ての合言葉です。Cookieだけで認証していると、こういう攻撃が成立してしまいます。

    CSRF(クロスサイトリクエストフォージェリ)の例
    <!-- 攻撃者のページ。訪問者がWordPressにログイン済みだと…… -->
    <form action="https://example.com/wp/wp-admin/user-new.php" method="post">
      <input name="user_login" value="attacker">
      <input name="role" value="administrator">
    </form>
    <script>document.forms[0].submit();</script>

    Cookieはドメインに対して自動で送られるので、リクエストは「ログイン中の管理者からの正当な要求」に見えてしまいます。nonceがあると、攻撃者はその値を知り得ないため、この形の攻撃は成立しません。

    ややこしいのは、WordPressのnonceは用途ごとに別物だという点です。管理画面のフォームに埋まっているnonceと、REST APIが要求するnonceは別で、片方をもう片方に使うと弾かれます。

    用途 取得方法 渡し方
    管理画面のフォーム送信 フォーム内の hidden 項目(_wpnonce) フォームの一部として送信
    REST API wpApiSettings.nonce、または admin-ajax.php?action=rest-nonce X-WP-Nonce ヘッダ

    最初、私はページのHTMLから正規表現で10桁の16進数を拾ってnonceにしていました。当然これは別用途のnonceを掴むことがあり、rest_cookie_invalid_nonce という403が返ります。確実な取り方は次のとおりです。

    REST API用のnonceを確実に取る
    // WordPressが専用に用意しているエンドポイント。
    // 管理画面にログインしていれば、有効なnonceを文字列で返す。
    const nonce = (await fetch('/wp/wp-admin/admin-ajax.php?action=rest-nonce', {
      credentials: 'same-origin'
    }).then(r => r.text())).trim();
    切り分けの考え方

    エラーメッセージは「何が起きたか」を教えてくれますが、「なぜ起きたか」は教えてくれません。「権限がありません」を額面どおり受け取っていたら、許可形式を増やす設定変更に進んでいたはずです。実際の原因は認証の受け渡しでした。別の経路で同じことを試して結果が変わるなら、原因は自分が疑っていた場所には無い——これは今回いちばん役に立った切り分け方でした。

    REST APIで下書きを作る

    本文がブラウザ上に乗り、有効なnonceも手に入りました。あとは投稿を作るだけです。

    投稿を下書きとして作成する
    const post = posts[0];
    
    const res = await fetch('/wp-json/wp/v2/posts', {
      method: 'POST',
      credentials: 'same-origin',
      headers: {
        'Content-Type': 'application/json',
        'X-WP-Nonce': nonce
      },
      body: JSON.stringify({
        title:      post.title,
        content:    post.content,
        status:     'draft',   // いきなり公開しない
        categories: [11]       // 「技術系」カテゴリのID
      })
    });
    
    const created = await res.json();
    console.log(res.status, created.id);   // 201 66

    status を draft にしているのは意図的です。いきなり publish にすると、表示が崩れていた場合に崩れた状態が世に出ます。下書きなら、確認してから公開できます。取り返しのつく順番で進めるというだけの話ですが、効果は大きいです。

    保存されたものを疑う

    201が返ったから成功、とはしませんでした。WordPressには wp_kses_post() という仕組みがあり、投稿本文から危険なタグや属性を削り落とすことがあります。今回の記事は class 属性に強く依存しているので、これが削られると装飾が全部消えます。

    削られるかどうかは、投稿するユーザーが unfiltered_html という権限を持つかで決まります。単一サイトの管理者は持っていますが、それは「持っているはず」であって「確認した」ではありません。そこで、保存されたものを読み戻して元と突き合わせました。

    保存後の本文が元と一致するか確かめる
    // context=edit を付けると、加工前の生データ(content.raw)が返る
    const res = await fetch('/wp-json/wp/v2/posts/66?context=edit', {
      credentials: 'same-origin',
      headers: {'X-WP-Nonce': nonce}
    });
    const saved = await res.json();
    
    console.log(saved.content.raw === post.content);       // true
    console.log((saved.content.raw.match(/<pre/g) || []).length);  // 12
    console.log(saved.status, saved.categories);           // draft [11]

    context=edit を付けるのがポイントです。これを付けないと表示用に整形された content.rendered しか返らず、元と比べても差が出てしまいます。生データ同士で比較して初めて「1文字も失われていない」と言えます。

    スラッグを先に整える

    公開する前に、URLの末尾になるスラッグを英語に変えました。日本語タイトルのまま公開すると、スラッグも日本語になり、URLがパーセントエンコードされて非常に長くなります。

    スラッグを後から変えるとリンクが切れる
    // 日本語スラッグの実際の姿
    /blog/%E3%81%AA%E3%81%9C%E3%81%93%E3%81%AE%E6%A7%8B%E6%88%90...
    
    // 変更後
    /blog/headless-wordpress-nextjs-architecture

    これを公開前にやるのには理由があります。公開後にスラッグを変えると、それまでのURLが404になります。SNSで共有されていれば、そのリンクは死にます。URLは公開した瞬間に「他人が持つ資産」になるので、後から変えられる前提で設計してはいけません。

    CSSが当たらない

    記事を1本公開して、フロント(Next.js側)で見てみると、文章は出るものの装飾が一切効いていませんでした。コードブロックは白背景のただの文字、補足ボックスも普通の段落です。

    原因は2つ重なっていました。

    1. className は流し込んだHTMLの中には届かない

    WordPressの本文は、React側では次のように表示しています。

    frontend/src/app/blog/[slug]/page.tsx
    <div
      className="wp-content mt-8 rounded-2xl bg-white p-6"
      dangerouslySetInnerHTML={{ __html: post.content }}
    />

    dangerouslySetInnerHTML は「このHTMLを解釈せずそのまま入れる」という指定です。中身はReactのコンポーネントではないので、Reactが管理する仕組み(className を渡す、コンポーネントを差し込む)は一切届きません。外側の div にどれだけクラスを足しても、内側の h2 や pre には影響しません。

    したがって、CSS側で「この箱の中の要素」として受けるしかありません。

    2. Tailwindが標準のスタイルを消している

    Tailwind CSSにはpreflightという機能があり、読み込むと h2 の文字サイズや p の余白といったブラウザ標準のスタイルを全部リセットします。ブラウザ差をなくすための仕組みですが、外部から流し込んだHTMLには致命的で、見出しと本文が同じ見た目になります。

    この2つをまとめて解決する形が、こうなります。

    frontend/src/app/globals.css
    .wp-content {
      /* 色は変数にまとめる。調整を1か所で済ませるため */
      --code-bg: #1c2128;
      --line:    #e3e6ea;
    
      line-height: 2;    /* 日本語は行間を広く取ると格段に読みやすい */
      font-size: 17px;
    }
    
    /* 装飾ではなく「上の余白」で階層を出す。
       線や色を足すより、空白のほうが読み手には強く効く */
    .wp-content h2 {
      font-size: 1.5rem;
      font-weight: 700;
      margin: 4.5rem 0 1.5rem;
      scroll-margin-top: 1.25rem;   /* 目次から飛んだとき上端に貼り付かない */
    }
    
    /* コードは濃色にして「ここは読み物ではない」と視覚的に伝える */
    .wp-content pre {
      background: var(--code-bg);
      color: #dfe3e8;
      border-radius: 8px;
      padding: 1.1rem 1.25rem;
      overflow-x: auto;   /* 折り返さない。折り返すとコードの構造が壊れる */
    }
    
    /* スマホで表がはみ出すのを防ぐ。
       表そのものではなくラッパーをスクロールさせるのがポイント */
    .wp-content .table-wrap { overflow-x: auto; }
    なぜ prose(Tailwind Typography)を使わないのか

    Tailwindには @tailwindcss/typography という、まさにこの用途のプラグインがあります。導入すれば見出しや段落は一発で整います。今回それを使わなかったのは、この記事群が .note や .code-block といった独自のclassを使っており、そこは結局自分で書く必要があるためです。半分プラグイン・半分自前だと、どちらに何が書いてあるか分からなくなります。既製品を入れるかどうかは「どこまで賄えるか」で決めるのが良さそうです。

    公開後の確認項目

    公開したあと、次の項目を確認しました。「見た目が合っていそう」で終わらせないための一覧です。

    確認すること 方法 なぜ見るのか
    一覧ページに出ているか ブログ一覧のリンクにスラッグが含まれるか 個別ページが正しくても、一覧に出なければ誰にも見つからない
    個別ページが200を返すか fetch(url) のステータス 404や500でないこと。スラッグの設定ミスはここに出る
    本文が入っているか HTML内に wp-content の箱があるか 取得に失敗しても、ページ自体は200で返ることがある
    HTMLがエスケープされていないか &lt;h2&gt; のような文字列が本文に出ていないか どこかでエスケープが挟まると、記事全体がタグの羅列になる
    CSSが実際に効いているか getComputedStyle() で計算後の値を見る 目視だと「効いているように見える」で通してしまう
    CSSが本当に適用されているかを値で確かめる
    const box = document.querySelector('.wp-content');
    const pre = box.querySelector('pre');
    
    console.log(getComputedStyle(pre).backgroundColor);
    // "rgb(28, 33, 40)" ← 指定した --code-bg と一致
    
    console.log(getComputedStyle(box).lineHeight);
    // "34px" ← 17px × 2.0。行間の指定も効いている

    getComputedStyle() は、CSSの継承や優先順位をすべて解決したあとの最終的な値を返します。「スタイルシートには書いたが、より強い指定に負けていた」というよくある失敗が、これを見れば一発で分かります。目で見て確認すると、うっすら効いている状態を「効いている」と判断してしまいがちです。

    おまけ:rebaseが止まるとき

    CSSをコミットしようとしたとき、以前と同じところで詰まりました。

    よく出るエラー
    error: cannot pull with rebase: You have unstaged changes.

    rebaseは「自分のコミットを、取り込んだ最新の状態の上に載せ直す」操作です。作業中の未コミットの変更が残っていると、載せ直す途中でそれが失われる危険があるため、Gitは先に止まります。

    毎回 git stash と git stash pop を手で打っていたのですが、これを自動でやるオプションがあります。

    退避と復帰を自動でやる
    git pull --rebase --autostash
    
    # 内部でやっていること:
    #   1. 未コミットの変更を一時退避(stash)
    #   2. rebase を実行
    #   3. 退避したものを戻す(stash pop)

    今回のように「関係ない別ファイルの変更が手元に残っている」場面では、これで止まらずに済みます。

    今回の学び

    技術的な内容より先に、いちばん大きかったのは冒頭の話です。ファイルを作ったことと、それが読める場所にあることは別。今回は「記事を書く」という依頼に対して、HTMLファイルを渡した時点で完了だと考えてしまっていました。依頼した側から見れば、ブログに載っていなければ何も起きていないのと同じです。

    技術面では、次の3つが残りました。

    ひとつ目は、制約は迂回するのではなく、その意味を理解してから別の道を探すということ。CORSに阻まれたとき、抜け道を探すのではなく「なぜこの制限があるのか」を理解したことで、ファイル選択欄という筋の通った経路にたどり着けました。制限の理由が分かれば、その理由に反しない方法も見えてきます。

    ふたつ目は、エラーメッセージは症状であって原因ではないということ。「権限がありません」を額面どおり受け取っていたら、許可設定をいじる方向に進んでいました。別の経路で同じ操作を試し、結果が変わったことで、原因が別の場所にあると分かりました。

    みっつ目は、成功したという返事を信じないということ。201が返っても、中身が削られていないかは別問題です。保存されたものを読み戻して元と比較する。CSSは目で見ずに計算値で確認する。ひと手間ですが、この確認があるから「できました」と言い切れます。