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  • 印を付けただけでは、探せるようにならなかった

    印を付けただけでは、探せるようにならなかった

    記事一覧のカードには、前から「読了済み」の印を付けていました。

    付けた当時は57本でした。いまは110本を超えています。印は役に立たなくなっていました。

    この記事で扱うこと

    読了の印だけでは足りず、未読だけを出す絞り込みを足した話です。URLに入れなかった理由、読んだ人にだけボタンを出した理由、そして0件の見せ方を書きます。

    見分けることと、探すことは違う

    印が付いていれば、目の前のカードが既読かどうかは分かります。見分けることはできます。

    けれど「まだ読んでいないものを見たい」ときにやることは、100枚のカードを上から順に見て、印の付いていないものを拾う作業になります。これは探す作業で、印はそれを助けていません。

    それは一覧の仕事だった

    並んでいるものから条件に合うものを取り出すのは、一覧の側がやることです。

    印だけ出して残りを目でやらせるのは、判定の材料は渡したが、判定はそちらでやってくれと言っているのと同じでした。

    URLには入れなかった

    この一覧には、すでにカテゴリとタグの絞り込みがあります。どちらも /blog?category=tech のようにURLに入ります。

    未読の絞り込みは、同じ形にしませんでした。

    絞り込み 誰にとっても同じか URLに入れるか
    カテゴリ・タグ 同じ。誰が開いても同じ記事が出る 入れる
    未読 人によって違う 入れない

    URLに入れるということは、その状態を他の人に渡せるということです。カテゴリなら渡せます。「技術系の記事はここ」と共有できます。

    未読は渡せません。渡された側にとっては、自分と関係のない条件で記事が消えている一覧になります。共有したつもりの人も、渡された人も、何が起きたか分かりません。

    読んだことがある人にだけ出す

    ボタンは、1本でも読んだ記録がある人にだけ出しています。

    初めて来た人にとっては、全部が未読です。押しても何も変わりません。

    効かないものが置いてあると、その場所ごと見なくなる

    押して何も起きない経験を一度すると、そのボタンは「効かないもの」として記憶されます。

    後日ちゃんと効く状態になっても、もう押されません。意味を持つまで出さないほうが、意味を持ったときに使われます。

    0件を、失敗のように見せない

    未読だけにして0件になる状態は、全部読み終えたという意味です。良い状態です。

    ところが検索の0件と同じ文面を出すと、何かを間違えたように見えます。そこで分けました。

    状況 出す文面
    検索で0件 「〜に当てはまる記事はありませんでした」+用語集への案内
    未読が0件 「記事はすべて読み終えています」+絞り込みを解除するボタン

    解除のボタンを添えているのは、行き止まりにしないためです。0件の画面で、絞り込みを外す手段がその場に無いと、戻り方を探すことになります。

    戻ってきたときに、数が合わない

    実装して最初に気になったのが、ここでした。

    一覧から記事を開いて読み、ブラウザの「戻る」で一覧に帰ってくる。このときページは作り直されません。離れたときの画面がそのまま出てきます。

    いま読んだ記事が、未読のまま残る

    読了の記録は更新されているのに、一覧は古いままです。「未読だけ」と書いてあるのに、たったいま読んだ記事が並びます。

    戻ってきたときに発生する合図(pageshow)で読み直すようにしました。結果として、戻った瞬間にいま読んだ記事が一覧から消えます。目の前で消えるのは少し驚きますが、「未読だけ」と書いてある以上、消えるほうが正しいと判断しました。

    読了の記録は、こちらには届いていない

    念のため書いておくと、どの記事を読んだかという記録はその人のブラウザの中にだけあります。こちらのサーバーには送っていませんし、見ることもできません。

    だからこの絞り込みは、サーバー側では掛けられません。ブラウザ側でやっているのはそのためです。

    今回の学び

    まず、材料を出すことと、仕事をすることは違うということ。印は判定の材料でしたが、判定そのものは読む人に残っていました。数が増えると、その差がそのまま手間になりました。

    次に、渡せる条件と渡せない条件があること。URLに入れるかどうかは、実装の都合ではなく「他の人に渡して意味があるか」で決まりました。

    そして、0件には種類があること。見つからなかった0件と、やり終えた0件は別のものです。同じ文面で済ませると、良い知らせが悪い知らせに見えます。

  • ソース解説(2) 目次は本文から作る

    ソース解説(2) 目次は本文から作る

    記事の目次は、以前は手で書いていました。見出しを1つ足すたびに目次も直す。直し忘れると、目次に無い節ができます。

    しかも壊れていても画面は普通に見えます。リンクが切れているか、節が抜けているかは、上から順に確かめないと分かりません。

    いまは本文から機械的に作っています。今回はその処理を、実際のコードで読んでいきます。

    この記事で扱うこと

    本文が「文字列」として届くこと、そこから見出しを拾う方法、既にあるidを勝手に変えてはいけない理由、そして読んでいる位置をどう追いかけているかです。

    本文は、部品の木ではなく1本の文字列で届く

    前提から確認します。記事の本文はWordPressからHTMLの文字列として届きます。

    画面に出す側から見ると、これは部品の集まりではありません。<h2>…</h2> という文字の並びが入った、長い1本の文字列です。

    だから見出しを数えるにも、リンクを張るにも、文字列のまま扱うしかありません。ここが出発点です。

    見出しを拾う

    使っているのはこの1行です。

    const HEADING_PATTERN = /<(h2|h3)([^>]*)>([\s\S]*?)<\/\1>/gi;

    3つに分けて読みます。

    部分 拾うもの
    (h2|h3) 見出しの種類
    ([^>]*) タグに付いている属性
    ([\s\S]*?) 見出しの中身

    最後の \1 が効いています。これは「1つめで拾ったのと同じ文字」という意味です。h2 で始まったなら </h2> で終わるものだけを拾います。ここを (h2|h3) と書いてしまうと、<h2> で始まって </h3> で終わる、ありえない組み合わせまで拾ってしまいます。

    [\s\S]*? は「改行を含む、なんでも」。見出しが複数行に分かれていても拾えます。末尾の ? は「できるだけ短く」で、これが無いと最初の見出しから最後の見出しまでを丸ごと1つとして拾ってしまいます。

    中身からタグを落とす

    見出しの中に <code> や <strong> が入っていることがあります。目次には文字だけ欲しいので、タグを落とします。

    このとき、実体参照も戻します。&amp; のままだと、目次に「&amp;」と見えてしまうからです。

    順番 戻す対象 戻した結果
    1 &nbsp; 空白
    2 &lt; <
    3 &gt; >
    4 &quot; 二重引用符
    5 &#39; 単引用符
    6 &rarr; →
    最後 &amp; &
    順番を変えると壊れる

    &amp; を先に戻すと、&amp;lt; がまず &lt; になり、次の行で < になります。

    元の文字列は「&lt; という文字を表示したい」という意味でした。2回変換したせいで、本物のタグの記号に化けています。置き換えの順番だけで結果が変わる例です。

    既にあるidは、絶対に変えない

    見出しにはリンク先としてのidが要ります。無ければ振りますが、既にあるものは触りません。

    const existingId = extractId(attributes);
    const id = existingId ?? ("section-" + (++autoIdCount));

    ?? は「左が無いときだけ右を使う」。ここが分かれ目です。

    idを振り直すと、外から張られたリンクが切れる

    公開済みの記事の見出しに、誰かが #その見出し 付きのURLで言及しているかもしれません。

    順番でidを振り直すと、記事の途中に節を1つ足しただけで、それ以降のidが全部ずれます。ページは開けるので404にもならず、ただ違う場所に着地します。壊れたことに気づく手段がありません。

    そして、idを書き足すときは既にある場合と分けています。

    if (existingId) {
      // 属性をそのまま使い、id は書き足さない
    } else {
      // 属性のうしろに id を1つ書き足す
    }

    属性をそのまま持ち回しているので、既にidがある側で書き足すと id が2つ並びます。分けているのはそのためです。

    見出しへのリンクを、その場で差し込む

    同じ処理のついでに、見出しの末尾へリンクを足しています。

    <a class="heading-anchor" href="#見出しのid"
       aria-label="この見出しへのリンク">
      <span aria-hidden="true">#</span>
    </a>

    「#」は見る人には意味が通じますが、読み上げると「シャープ」としか聞こえません。そこで記号は読み上げの対象から外し、説明を別に持たせています。

    ブラウザ側で後から差し込むこともできますが、ここで一緒に組み立てれば、訪問者に送るJavaScriptが1行も増えません。

    読んでいる位置を追いかける

    ここからはブラウザ側です。いま画面に見えている見出しを光らせています。

    スクロールのたびに全見出しの座標を測る方法もありますが、それは見出しが多い記事ほど重くなります。代わりに、ブラウザ側で交差判定をしてくれる仕組みを使っています。

    rootMargin: "-80px 0px -70% 0px"

    この1行が効いています。画面全体ではなく、上から80pxより下、かつ画面の上から30%までの帯だけを対象にしています。

    なぜ画面全体ではないのか

    画面全体を対象にすると、見出しが画面のいちばん下に入った瞬間から「いま読んでいる節」と判定されます。まだ目は前の節を読んでいるのに、目次の光る場所だけ先に進みます。

    帯を上のほうに絞ると、判定の位置と目の位置が近くなります。実感に合わせるための調整が、この数字です。

    今回の学び

    まず、手で二重に持つものは、いずれずれるということ。目次と本文は同じ情報を2か所に持っていました。片方から作れば、ずれようがありません。今回の処理は、正確に言えば目次を作っているのではなくずれる可能性を消しているほうが本題でした。

    次に、既に外へ出したものは、勝手に動かせないこと。idを振り直せばコードは簡単になりますが、外から張られたリンクが静かに壊れます。自分の都合で変えられるものと、変えられないものがあります。

    そして、正しい判定と、実感に合う判定は別だということ。見出しが画面に入ったかどうかの判定は、どちらの帯でも「正しく」動きます。合うほうを選ぶには、数字ではなく自分で読んでみるしかありませんでした。

  • ソース解説(1) 全体の地図と、境目の引き方

    ソース解説(1) 全体の地図と、境目の引き方

    このサイトの作りについては何度か書きましたが、中のコードそのものには触れていませんでした。

    ここから何本かに分けて、実際のファイルを開きながら説明していきます。まずは全体の地図と、読むために知っておいたほうがいい前提からです。

    この記事で扱うこと

    フォルダの分け方、依存しているものの数、そして「サーバーで動く部品」と「ブラウザで動く部品」がどこで分かれているかです。次回以降、個別のファイルを1つずつ読んでいきます。

    本番で必要な依存は5つしかない

    package.json を開くと、公開後に動かすために必要なものはこれだけでした。

    名前 役割
    next ページを組み立てて配る本体
    react / react-dom 画面を書く仕組み
    graphql-request WordPressへ問い合わせる
    graphql その問い合わせ文を解釈する

    この他に、開発中だけ使うもの(型検査、書式の検査、CSSの生成、型の自動生成)があります。本番の動作に関わるのは上の5つだけです。

    少ないほうが、後で困らない

    部品を足すたびに、その部品の脆弱性を見張る相手が1つ増えます。入れていないものは、更新も監視も要りません。

    目次も検索も日付の整形も、自分で書いてあります。どれも数十行で、外から持ってくるほどの分量ではありませんでした。

    フォルダは3つに分かれている

    コードは src/ の下にあり、大きく3つです。

    場所 入っているもの
    src/app/ URLと1対1で対応するページ
    src/components/ 画面に出る部品
    src/lib/ 画面に出ない処理とデータ

    app/ は特別で、ファイルの置き場所がそのままURLになります。app/blog/page.tsx が /blog に、app/blog/[slug]/page.tsx が /blog/記事名 になります。角かっこは「ここは可変」という意味です。

    ルーティングの設定ファイルはありません。フォルダを作ればURLが増えます。

    境目は「ブラウザが要るかどうか」で引く

    ここがいちばん説明の要るところです。

    いま作っているのは、ほとんどのコードがサーバー側で動く形です。ページはあらかじめ組み立てられ、訪問者にはHTMLとして届きます。ブラウザで動くコードは、必要な部品にだけ付けます。

    その指定が、ファイルの1行目に書く "use client" です。

    書いていない 書いてある
    どこで動くか サーバー サーバーとブラウザ両方
    できること CMSへの問い合わせ、秘密の値の利用 クリック、スクロール、保存
    訪問者に届くJS 増えない そのぶん増える

    このサイトの部品を数えると、ちょうど半々でした。16個ずつです。

    これとは別に、スクロールの位置や保存した設定を読むための小さな処理が3つ、src/lib/ にブラウザ用として置いてあります。部品ではないので上の数には入れていません。

    書いてある側はどれも、ブラウザでしか手に入らないものを触っています。スクロールの位置、クリック、保存した設定、画面の幅。逆に言えば、それらが要らない部品には付けていません。

    「とりあえず付ける」と、全部が重くなる

    "use client" は、そのファイルから読み込んでいるものにも連鎖します。上のほうの部品に付けると、その下にぶら下がる部品まで一緒にブラウザへ送られます。

    迷ったときに付けておくと動きはしますが、動く代わりに、送るものが静かに増えます。境目はできるだけ末端に置くほうがよく、このサイトでも「ボタン1つだけを別部品にして、そこにだけ付ける」という形がいくつかあります。

    型は、CMSの都合に追いつくために使っている

    TypeScriptを使っている理由は、書き間違いを見つけるためだけではありません。

    記事のデータはWordPressから届きます。項目の名前も、値が空になり得るかどうかも、決めているのはCMS側です。手で型を書き写すと、CMS側で項目を足した日から、少しずつずれていきます。

    そこで、CMSが公開している仕様を読み取って型を自動生成しています。コマンドを1つ走らせると、実際に書いた問い合わせ文に合わせた型ができます。

    「空かもしれない」を、こちらの都合で消せない

    自動生成された型は、title や slug を「無いかもしれない」ものとして扱います。実際に下書きや移行中のデータでは空になり得るからです。

    手書きなら、面倒なので「必ずある」と書いてしまうところです。生成された型は、こちらの願望ではなく相手の仕様を写しているので、そこで手が止まって「無かったらどうするか」を考えることになります。

    この先で読んでいくもの

    次回以降、次の順で中身に入ります。

    回 読むもの 話の中心
    2 目次を作る処理 HTMLを文字列として扱う
    3 同意を取る仕組み 保存する形と、読み込まない実装
    4 CMSから取ってくる処理 キャッシュと、失敗する前提
    5 RSSとサイトマップ 文字列を自分で組み立てる場所

    今回の学び

    まず、依存の数は、後から効いてくるということ。今のところ5つで足りていて、そのぶん更新の通知も脆弱性の報告も少なく済んでいます。数十行で書けるものを外から持ってこない、という判断が積み重なった結果でした。

    次に、境目は機能ではなく「何が必要か」で引くこと。ブラウザでしか手に入らないものを使う部品だけを、ブラウザ側に置いています。見た目の複雑さや行数とは関係がありません。

    そして、相手が決めていることは、相手から写すこと。CMSのデータの形はこちらで決められません。手で書き写すとずれていくので、生成させています。ずれないことより、ずれようがない形にしてあることのほうが大事でした。

  • 最初の画面に、本文が無かった

    最初の画面に、本文が無かった

    記事ページを開いたときに何が見えているかを、実際に測りました。

    測ったもの 値
    画面の高さ 723px
    本文が始まる位置 772px
    先頭のアイキャッチ画像 455px

    最初の画面に、本文が1文字も出ていませんでした。タイトルと日付と画像で埋まっていて、文章はスクロールしないと始まりません。

    この記事で扱うこと

    アイキャッチを消した理由、コードブロックにコピーボタンを付けた理由、見出しに個別リンクを足した理由、そして関連記事の選び方を日付から変えた理由です。

    1. アイキャッチを、記事ページから消した

    455pxは画面の6割です。ここを何が占めているかを考え直しました。

    このサイトのサムネイルは、記事タイトルを文字として描いた画像です。つまり、すぐ上の見出しと同じ内容を、画像でもう一度見せていたことになります。

    同じことを二度言うために、画面の6割を使っていた

    検索から来た人は「探している答えがここにあるか」を数秒で判断します。その数秒に見えているのがタイトルの繰り返しでは、判断する材料がありません。

    画像そのものは、記事一覧のカードとSNSで共有されたときの表示に使っています。作るのをやめたのではなく、本文を読む画面には置かないという判断です。

    2. コードブロックに、コピーボタンを付けた

    ある記事にはコードブロックが25個ありました。コマンドや設定値は、読むためではなく手元で使うために載せています。

    選択してコピーもできますが、折り返しのある長い行では取りこぼしやすい。ボタンを1つ足すだけで、この摩擦が消えます。

    ひとつ決めたのは、クリップボードが使えない環境ではボタンを出さないことです。押しても何も起きないボタンは、無いより悪いので。

    3. 見出しに、その見出しへのリンクを足した

    見出しが12個ある記事で、「この部分を見てほしい」と人に伝える手段がありませんでした。記事のURLしか送れず、相手は自分で探すことになります。

    用語集では語ごとに直接指せるよう整備したのに、記事側は未対応でした。同じ問題です。

    実装は、目次を組み立てる処理の中で一緒に埋め込みました。表示のあとにブラウザ側で差し込むこともできますが、そのぶん読み込むJavaScriptが増えます。すでに文字列を組み立てている場所があるなら、そこで済ませるほうが軽い。

    4. 関連記事を、日付ではなく内容で選ぶ

    これまで記事の末尾には「1つ新しい記事」と「1つ古い記事」だけを出していました。

    公開日が近いことと、内容が近いことには関係がありません。直前に書いた記事がまったく別の話題、ということは普通に起きます。

    タグの重なりを2点、カテゴリの重なりを1点として、上位3件を出すようにしました。

    なぜタグを重く見るか
    カテゴリ: 技術系 … ほぼ全記事が同じ
    タグ    : dns, seo, nextjs … 話題が分かれる

    カテゴリだけで判断すると、ほぼ全記事が等しく「関連」になります。粗い区分は、近さを測る物差しになりません。

    数を揃えるために、関係ない記事を混ぜない

    重なりが1つも無い記事は出しません。3件に満たなければ、その数だけ出します。1件も無ければ、セクションごと出しません。

    「関連記事」という見出しは、書いてあることが本当である前提で読まれます。体裁のために埋めると、その前提が崩れます。

    今回の学び

    まず、自分のページを、来た人の目で測ること。作っている側は上から下まで知っているので、最初の画面に何が見えているかを意識しません。数字にすると一目で分かります。

    次に、同じ内容を二度見せていないかを疑うこと。タイトルの画像とタイトルの文字は、別々に作ったので気づきませんでした。並べて初めて重複だと分かります。

    そして、片方で解決したことは、もう片方でも起きていること。用語集では直接指せるように整備したのに、記事では手つかずでした。同じ問題は、場所を変えて何度も出てきます。

    最後に、物差しが粗いと、何も測れないこと。全記事が同じ値を持つ項目で並べ替えても、順番は決まりません。分類は、細かさがそろって初めて役に立ちます。

  • ゆっくり読む人ほど、読了にならなかった

    ゆっくり読む人ほど、読了にならなかった

    「ゆっくり読むと、読了にならないのではないか」。自分で読み返していて、そう思いました。

    調べたところ、そのとおりでした。丁寧に読む人ほど読了にならず、勢いよくスクロールした人ほど読了になるという、逆の作りになっていました。

    この記事で扱うこと

    割合で測るときに何を分母にするかで意味が変わるという話と、「最後まで到達した」と「読み終えた」を分けて考えた結果です。

    元の判定

    読了は、こう判定していました。

    元の計算
    進捗 = スクロール位置 ÷ (ページ全体の高さ − 画面の高さ)
    
    進捗が 95% を超えたら読了

    一見、妥当に見えます。95%にしているのも、末尾ぴったりまで行かなくてよいようにという配慮でした。

    実際に測ってみた

    推測で直すと、原因が別にあったときに気づけません。実際の記事のページで数字を出しました。

    測ったもの 値
    ページ全体の高さ 7,609px
    本文の高さ 6,153px
    本文より下に残っている高さ 684px
    本文を読み終えた時点の進捗 89.9%

    本文を最後の1行まで読んでも、89.9%にしかなりません。95%に届くには、そこからさらに344px下——前後の記事へのリンクと、フッターの中まで進む必要がありました。

    なぜ「ゆっくり」だと届かないのか

    ここが今回の肝でした。読む速さと、スクロールの止まる位置には関係があります。

    同じページでも、止まる場所が違う
    勢いよくスクロールした人
      → 慣性でページの最下端まで滑る → 100% → 読了
    
    文章を追って読んだ人
      → 本文の最後の行で手を止める   → 89.9% → 読了にならない

    速く動かした指は、そのまま惰性でフッターまで運ばれます。一方、読んでいる人は読むものが無くなった時点で止まります。当然の行動です。

    分母に、読まないものが入っていた

    ページ全体の高さには、フッターも、前後の記事へのリンクも、一覧へ戻るリンクも含まれます。どれも「読む」対象ではありません。

    測りたかったのは「本文をどこまで読んだか」なのに、分母は「ページをどこまで動かしたか」でした。名前は進捗でも、中身はスクロール量です。

    分母を本文に変えた

    基準を、ページ全体から本文の高さに変えました。

    新しい計算
    進捗 = (画面の下端 − 本文の開始位置) ÷ 本文の高さ

    本文の末尾が画面の下端に来た時点で100%になります。読み終えたら100%という、当たり前の対応になりました。

    ただし、これだけでは足りない

    末尾への到達だけを条件にすると、別の問題が残ります。目次から末尾の見出しへ飛んだ場合も、一気に下まで送った場合も、読了になります。

    「画面が下まで移動した」ことと「読み終えた」ことは、別のできごとです。

    そこで条件を2つにしました。

    条件 これが無いと
    本文の末尾まで到達している 開いて放置しただけで読了になる
    一定時間、実際に見ている 下まで送っただけで読了になる

    時間の基準は読了目安の4分の1にしました。8分の記事なら2分です。速く読む人を弾かない程度に緩く、しかし一瞬で下まで送った操作は通らない、という線を狙っています。

    「開いていた時間」ではなく「見ていた時間」

    単純に開いてからの経過時間で測ると、タブを開いたまま放置した時間まで読書時間になります。それでは条件の意味がありません。

    ブラウザには「このページがいま見えているか」を知る手段があります。見えている間だけ加算するようにしました。席を外して戻ってきた人が損をしません。

    一度到達したことを、忘れないようにする

    実装中に、条件が2つになったことで生まれる穴に気づきました。

    2つの条件は、同時に満たされるとは限りません。先に末尾まで読み、そのあと上に戻って読み返している最中に時間の条件を満たすことがあります。

    このとき現在位置だけを見ていると、「いま末尾にいないので読了ではない」と判定されます。一度は最後まで読んだという事実が、位置を戻した瞬間に消えてしまいます。

    起きたことは、消さずに覚えておく

    到達はできごとで、位置は状態です。できごとを状態から読み取ろうとすると、状態が変わったときに失われます。

    「一度でも到達したか」を別に記録するようにしました。読み返しても消えません。

    高さが変わることも見るようにした

    もうひとつ。本文の高さは、読んでいる最中にも変わります。画像が後から読み込まれる、目次を開く、画面を回す。

    元の実装は画面サイズが変わったときしか計算し直していませんでした。画像の読み込みでは、その通知は来ません。

    要素の大きさが変わったこと自体を教えてくれる仕組みに変えました。高さがずれたまま古い値で判定し続けることが無くなります。

    表示のほうも、記録に合わせた

    最後に、細かいけれど気持ち悪い食い違いを直しました。

    画面の「読了済み」という表示は、残り0%になった時点で出ていました。しかし実際に記録されるかどうかは、時間の条件も見ています。

    つまり画面には読了済みと出ているのに、記事一覧には読了マークが付かない状態があり得ました。

    表示のほうを、記録に従わせるようにしました。2つの真実を持たない、というだけの話です。

    今回の学び

    まず、割合で測るなら、分母が何かを疑うこと。今回は分母に、読む対象でないものが1割ぶん入っていました。式は正しく動いていて、測っているものが違っただけです。正しく計算された、意味の違う数字がいちばん見つけにくいと思います。

    次に、推測で直さず、まず測ること。「95%は厳しすぎるから90%に下げよう」でも症状は消えたはずです。しかしそれは、フッターの高さが変わるたびに再発します。89.9%という数字を出したから、分母の問題だと分かりました。

    そして、操作と、意味を区別すること。「下までスクロールした」は操作で、「読み終えた」は意味です。操作から意味を推し量るときは、必ずずれが出ます。ずれを埋める条件が要ります。

    最後に、できごとは、状態から読み取らないこと。一度起きたことは、現在の状態を見ても分からなくなることがあります。起きた時点で記録しておけば、あとから位置が変わっても失われません。

  • 読む邪魔をしない

    読む邪魔をしない

    スマートフォンで自分の記事を読んでいて、気になることがありました。

    画面の上に、ヘッダーと目次がずっと貼り付いたままです。どちらも便利なつもりで置いたものですが、読んでいるあいだは、ただ場所を取っています。

    この記事で扱うこと

    常に出しておくものと、必要なときだけ出すものの分け方。「消す」ではなく「薄くする」を選んだ理由。そして、2つの追従する要素が重なったときに起きた、位置の食い違いです。

    貼り付いたものは、面積を占め続ける

    スマートフォンの画面の高さは、だいたい本文15〜20行ぶんです。そこにヘッダーが1行、目次のバーが1行居座ると、実際に読める範囲は1割ほど減ります。

    減るだけならまだしも、目次のバーはいま読もうとしている行の上に半透明でかぶさります。スクロールしている最中がいちばん邪魔です。

    3つの変更

    対象 前 後
    ヘッダー 常に表示 下へ読み進む間は引っ込む
    目次(スマホ) 常に同じ濃さ スクロール中だけ薄くなる
    先頭へ戻る 手段なし ボタンを出す

    1. ヘッダーは「量」ではなく「向き」で判断する

    最初に考えたのは「300pxスクロールしたら隠す」でした。単純ですが、これだと読み進めるほど隠れっぱなしになります。メニューを開きたくなったとき、ページの先頭まで戻ることになります。

    採用したのは、スクロールの向きで判断する方式です。

    判断の基準
    下へ読み進んでいる  → 隠す(読むのに要らない)
    上へ戻し始めた      → 出す(何かしたいはず)
    ページの先頭付近    → 必ず出す

    上へのスクロールは、たいてい「前に戻りたい」「別の場所へ行きたい」という合図です。その動作を、ヘッダーを呼び出す操作として兼ねさせています。新しい操作を覚えてもらう必要がありません。

    細かいが要る配慮が3つあった

    ひとつめはわずかな揺れを無視すること。指の震えや慣性の揺り戻しで数px動くたびに出し入れすると、ヘッダーが点滅します。6px未満の移動は無視しています。

    ふたつめは画面の端で引っ張ったとき。iPhoneでは画面の一番上でさらに引っ張ると、スクロール位置がマイナスになります。そのまま計算すると「上に動いた」と誤判定します。0で止めるようにしました。

    みっつめはメニューを開いているあいだは隠さないこと。開いた本人の操作でヘッダーごと消えたら、何が起きたのか分かりません。

    2. 目次は「消す」のではなく「薄くする」

    目次も同じように隠す案がありました。やめました。

    この目次のバーには読了の進捗も出しています。消すと、どこまで読んだかが分からなくなります。

    邪魔なのは「濃さ」であって「存在」ではない

    困っていたのは、文字の上に別の文字が重なって読めないことでした。薄くすれば下の文字は読めます。位置と進捗は視界の端に残ります。

    指を止めれば元の濃さに戻ります。スクロール中しか邪魔にならないものを、常時消す必要はありません。

    開いているときは薄くしません。開いているのは読むためではなく選ぶためなので、そこで薄くすると目的の見出しを探せなくなります。

    3. 2つの追従が、食い違った

    ここで問題が出ました。

    目次は「ヘッダーの高さ(56px)ぶん下」に貼り付く指定になっています。ヘッダーがそこにある前提です。

    ところがヘッダーは引っ込むようになりました。すると——

    ヘッダーが消えたあと
    画面の上端
       ↓
    (56pxの空白)   ← ヘッダーが居たはずの場所
       ↓
    目次のバー       ← 宙に浮いて見える

    目次だけが、意味のない隙間を空けて浮きます。

    状態を、渡さずに共有する

    ヘッダーが隠れているかどうかを、目次に伝える必要があります。素直に考えると「上から順に受け渡す」ですが、この構成では間にあるページ全体を作り替えることになります。

    選んだのは、ページ全体に1つの値を置く方法です。

    ヘッダーが書き、目次が読む
    ヘッダー: --header-offset = 3.5rem(表示中)/ 0rem(隠れている)
    目次    : 貼り付く位置 = --header-offset

    ヘッダーは自分の状態を書くだけ、目次はその値を見るだけです。お互いを直接知らないまま、位置だけが揃います。

    あえてTailwindを使わなかった箇所

    このサイトのスタイルはTailwind CSSで書いています。今回の位置指定も書けますが、1か所だけ普通のCSSにしました。

    理由は、壊れ方です。Tailwindのクラス名を書き間違えると、CSSが生成されないだけで、ビルドは成功します。

    気づけない壊れ方を選ばない

    位置指定が消えると、目次は貼り付くのをやめて一緒に流れて消えます。エラーは出ません。実際に記事を開いてスクロールするまで分かりません。

    この部分は今回いちばん確かめにくい場所だったので、綴り間違いで静かに消えない書き方を選びました。

    4. 先頭へ戻るボタン

    最後に、よくあるボタンを置きました。ここでも1つだけ気を付けた点があります。

    薄くして消したボタンは、見えないのに押せます。透明度を0にしただけでは、そこにある扱いのままです。キーボードで操作している人には、見えない項目に順番が回ってきます。

    見えないあいだは押せない・順番が回ってこない・読み上げられないの3つを揃えました。見た目と実体を一致させています。

    あわせて、端末の「動きを減らす」設定を尊重しています。滑らかに移動するのが心地よい人ばかりではありません。

    今回の学び

    まず、常に出しておくものと、必要なときだけ出すものを分けること。便利だから常に出す、を積み重ねると、本文が読める面積だけが減っていきます。何のために画面を開いているのかに戻って決めるべきです。

    次に、「隠す」の前に「薄くする」を検討すること。困っているのが重なりなら、濃さを変えるだけで解決することがあります。消してしまうと、その要素が持っていた別の役割まで一緒に失います。

    そして、動かすものが増えたら、位置の前提を疑うこと。固定されている前提で書いた数値は、片方が動き出した瞬間に嘘になります。今回は「ヘッダーの高さ」がそれでした。

    最後に、確かめにくい場所ほど、壊れたら気づく書き方を選ぶこと。同じ結果になる書き方が2つあるなら、間違えたときに黙って消えないほうを選ぶ価値があります。

  • 届かない問い合わせ

    届かない問い合わせ

    問い合わせフォームを作りました。

    実装そのものは小さいのですが、決めることが3つありました。どれも「動くかどうか」ではなく「壊れたときにどう見えるか」の話でした。

    この記事で扱うこと

    メールアドレスを載せない選択、送信先が未設定のときにフォームを出すかどうか、そして失敗をどう伝えるか。共通しているのは「成功したように見える失敗」をどう防ぐかです。

    1. メールアドレスを直接載せない

    いちばん簡単なのは、ページにメールアドレスを書くことです。実装が要らず、壊れる要素もありません。

    ただし、公開した以上は自動で収集され、迷惑メールが届き始めます。個人サイトでも例外ではありません。

    そこで、フォームの送信先だけを外部サービスに任せる形にしました。受け取り用のアドレスがブラウザ側に出ません。

    方式 手間 アドレスの露出
    アドレスを載せる ゼロ する
    自前でメール送信 サーバーと送信サービスの契約が必要 しない
    外部サービスへ送信 登録して1行設定するだけ しない

    自前で用意する案もありましたが、問い合わせ1つのために管理するものが増えます。メール送信サービスの契約、鍵の管理、送信失敗時の扱い。得られるものに対して重すぎると判断しました。

    2. 送信先が未設定のとき、フォームを出すか

    ここが今回いちばん考えた点です。

    外部サービスの送信先URLは、環境変数で渡します。つまり設定を入れるまでは、送信先が空のままです。

    このとき、フォームをどう扱うか。素直に実装すると、こうなります。

    何も考えずに書くと
    フォームは表示される
       ↓
    入力して送信できる
       ↓
    送信先が空 → どこにも届かない
       ↓
    それでも「送信しました」と表示される

    これが最悪の状態です。

    送った側は、届いたと思って返信を待ちます。こちらには何も残りません。問い合わせが来なかったのか、届かなかったのかも分かりません。

    届かない問い合わせは、無いより悪い

    フォームが無ければ、相手は別の連絡手段を探すか、諦めます。どちらにしても相手は状況を把握できます。

    しかし届かないフォームは、相手に「連絡した」と誤認させます。返信が来ないことで、対応が悪いという印象だけが残ります。何もしないより損をしています。

    そこで、設定が無いときはフォームごと出さないことにしました。

    実装
    const ENDPOINT = process.env.NEXT_PUBLIC_CONTACT_ENDPOINT;
    
    if (!ENDPOINT) {
      return <p>お問い合わせ先は準備中です。</p>;
    }

    3行です。「準備中」と正直に出すほうが、動くように見えて届かないより、はるかにましです。

    3. 失敗を隠さない

    設定が正しくても、送信は失敗します。通信が切れる、外部サービスが落ちている、上限に達している。

    このとき、画面をどうするか。「送信しました」と出してしまうのは簡単です。実装が楽ですし、その場では体験が滑らかに見えます。

    しかし結果は2番目と同じで、相手は届いたと思って待ちます。

    失敗したときは失敗したと表示し、時間をおいて試すよう伝える形にしました。気まずさより、事実のほうが役に立ちます。

    3つに共通していたこと

    並べてみると、判断の軸は1つでした。

    避けたかった状態
    うまくいったように見えて、実は何も起きていない

    この状態が厄介なのは、誰も気づけないことです。エラーも出ず、画面も正常で、記録も残りません。問題があること自体が分からないので、直しようがありません。

    失敗するなら、見えるところで失敗させる

    機能が動かないことより、動かないのに動いて見えることのほうが高くつきます。「準備中です」と出ていれば、設定を入れ忘れていることに自分でも気づけます。静かに成功したふりをする実装は、自分自身も欺きます。

    今回の学び

    まず、簡単な方法には、たいてい代償があること。アドレスを直接載せるのは実装ゼロですが、迷惑メールという継続的なコストを払います。手間の総量で比べる必要があります。

    次に、未設定の状態を、設計に含めること。設定が入った状態だけを想定して作ると、入っていない期間の挙動が事故になります。「まだ設定していない」は必ず通る道です。

    そして、成功の表示は、成功したときだけ出すこと。当たり前に聞こえますが、実装を楽にするために崩れやすい原則でもあります。表示は事実に従わせるべきです。

    最後に、静かに失敗する仕組みを作らないこと。これは今回に限らず、繰り返し出てくる主題です。エラーが出る失敗は直せます。直せないのは、失敗したことが分からない失敗のほうです。

  • 上げる先が、ひとつしかなかった

    上げる先が、ひとつしかなかった

    脆弱性の警告が28件。そのうち23件が next に集約されることまでは分かっていました。あとは上げるだけ——のはずが、まず「どこまで上げるか」で手が止まりました。

    この記事で扱うこと

    更新先のバージョンをどう選んだか、自動化ツールがやってくれたこととやってくれなかったこと、そして「入れる必要のない設定」を消した判断。メジャーバージョンを2つ跨ぐ更新を、確認しながら進めた記録です。

    まず、選択肢を数える

    手元は 14.2.35 でした。自動で提案されていたのは 16.3.1。2世代ぶんの差があります。

    最初に考えたのは「まず14系の最新まで上げて、それで消える分を消そう」でした。メジャーを跨がなければ壊れにくいからです。これは実行しませんでした。調べたら、前提が違っていたからです。

    サポート状況
    Next.js 14  サポート終了(2025-10-26)
                最終パッチ 14.2.35 ← 手元にあるのがこれ
    
    Next.js 15  Maintenance LTS  2026年10月まで
    Next.js 16  Active LTS       2027年10月まで

    14系の最新は、すでに手元にありました。「上げる」という操作に余地が無く、18件の警告は14に留まる限り1件も消えません。

    やっても何も起きないコマンドを、実行しかけた

    調べる前は「14系の最新に上げましょう」と判断していました。実行すれば何かが変わるはず、という思い込みです。手を動かす前にサポート期限を1つ調べただけで、この無駄が消えました。作業の前に前提を確認するのは、遠回りに見えて速いです。

    15を選ばなかった理由

    残る選択肢は15と16です。15の方が変更が小さいので、一見こちらが安全に見えます。

    しかし15のサポートは2か月後に切れます。そこで上げても、すぐ同じ作業をやり直すことになります。「変更が小さい」ことの価値は、その変更が長持ちするかどうかで決まります。2か月で無効になるなら、小さいことに意味がありません。

    実質的に、上げる先は16しかありませんでした。

    何が壊れるかを、先に調べる

    移行ガイドを読んで、このサイトに該当するものだけを抜き出しました。全部を読むのではなく、自分のコードに関係するものを探すという読み方です。

    変更点 このサイトへの影響
    params が非同期になる 該当。記事ページで同期的に使っている
    React 19.2 が必要 該当。18.3.1 から上げる必要がある
    next lint の廃止 該当。package.json に書いてある
    画像設定の既定値変更 明示指定していないので影響なし
    Turbopackが既定に webpack設定を持っていないので影響なし
    middleware の改名 使っていない

    該当したのは3つだけでした。2世代ぶんの変更に見えて、実際に手を入れる場所は限られていると分かった時点で、作業の見通しが立ちます。

    自動化ツールは、半分やってくれる

    Next.jsには移行用のコードモッド(コードを機械的に書き換えるツール)が用意されています。2つ実行しました。

    実行したもの
    # パッケージ更新・設定ファイルの書き換え・lintの移行
    npx @next/codemod@canary upgrade latest
    
    # params / searchParams の非同期化
    npx @next/codemod@canary next-async-request-api .

    変換結果は正確でした。たとえば記事ページはこうなります。

    自動変換された箇所
    - type Props = { params: { slug: string } };
    + type Props = { params: Promise<{ slug: string }> };
    
    - export default async function BlogPostPage({ params }: Props) {
    + export default async function BlogPostPage(props: Props) {
    +   const params = await props.params;

    49ファイルを走査して2ファイルを変更、エラー0。手で直していたら見落としが出る種類の作業です。

    変換されなかった場所も、確認する

    「0 errors」は「全部やった」ではありません。ツールが認識できなかった書き方は、静かに素通りします。変更されたファイル数と、自分が想定していた箇所の数が合っているかは、自分で確かめる必要があります。今回は2ファイルで一致していました。

    入れる必要のない設定を、消した

    ここが今回いちばん判断が要った箇所です。

    コードモッドは、7つのファイルにこれを追加していました。

    追加されていたもの
    // TODO: Cache Components adoption. Refactor this route so this
    // opt-out can be removed.
    export const instant = false;

    調べると、これは16.3の新機能に対するオプトアウトで、別の設定を有効にしているときにだけ意味を持ちます。このサイトはその設定を使っていないので、7ファイルすべてで何もしていません。

    将来のために先回りして入れてくれたものです。しかし残すとどうなるかを考えました。

    残す場合 消す場合
    将来その機能を有効にしたとき、警告が出ない そのとき改めて入れる必要がある
    「あとで対応する」というTODOが7か所に残る コードに無効な設定が残らない

    消しました。誰も対応しないTODOは、そのうち景色になります。読むたびに「これは何だっけ」と確認するコストが7か所ぶん発生し、いずれ誰も読まなくなります。必要になったときに、必要な場所へ入れるほうが健全だと判断しました。

    自動生成されたものを、そのまま受け取らない

    コードモッドが入れたものは正しい提案です。しかし「このプロジェクトにとって必要か」までは判断していません。ツールは一般的に安全な側へ倒します。プロジェクトの事情を知っているのは書き手のほうです。

    本番に入れる前に、本番と同じもので確かめる

    今回はmainに直接入れず、ブランチを切りました。

    進め方
    git checkout -b feat/next-16
    (コードモッド実行・手直し)
    npm run build      ← 手元で通ることを確認
    git push -u origin feat/next-16

    ブランチをpushすると、デプロイ先がプレビュー用のURLを作ってくれます。本番と同じビルド手順で、本番と同じ環境に載った状態を、公開せずに触れます。

    そこで確認したのは6点です。

    確認項目
    1. 記事一覧が20本、サムネイルが出る
    2. 記事ページの本文・目次・読了バー
    3. sitemap.xml が25件(数を数える)
    4. robots.txt が4行
    5. 構造化データの日時に Z が付いている
    6. ビルド時のエラー・警告
    3番は、数えないと分からない

    sitemapは、失敗しても固定ページだけを返して200で応答する作りにしてあります。壊れていても画面は正常に見えます。「表示された」ではなく「25件あった」まで確認しないと、記事がsitemapから消えていても気づけません。

    全部通ったのを見てから、mainへマージしました。プレビューで通ったものが本番でも通る——確認の順番として、これが一番安く済みます。

    結果

    脆弱性の件数
    next     18件 → 0
    postcss   4件 → 0
    nanoid    1件 → 0
    glob      3件 → 0
    lodash    2件 → 2   (開発用のみ)
    
    合計     28件 → 2件

    glob が消えたのは想定外でした。ESLintも一緒に上がり、その依存として新しい glob が入ったためです。本番で動くもののうち、既知の脆弱性は無くなりました。

    残った2件は開発用の依存で、配信される成果物には入りません。

    今回の学び

    まず、「上げる」の前に、上げ先を数えること。14系の最新はすでに手元にあり、実行しても何も起きないコマンドを打ちかけていました。サポート期限を1つ調べるだけで防げます。

    次に、変更の小ささより、その変更が持つ期間で選ぶこと。15は変更が小さいですが2か月で切れます。安全に見える選択肢が、実は先送りなだけということがあります。

    そして、自動化ツールの出力も、読んでから受け取ること。コードモッドは正確でしたが、このプロジェクトに不要なものも入れていました。ツールは一般的に安全な側へ倒し、個別の事情までは知りません。

    最後に、本番と同じもので確かめてから本番に入れること。プレビュー環境を1回挟むだけで、「マージしてから気づく」が「マージ前に気づく」に変わります。確認の順番を変えただけで、リスクの大きさが変わります。

  • 追従する目次と、画面の取り合い

    追従する目次と、画面の取り合い

    スマホで目次を画面上部に貼り付けたい。

    PCではすでに右側に追従表示していました。同じことをスマホでもやるだけ——のはずが、実際に置いてみると本文を読む場所が足りなくなりました。貼り付くものは、そこにある間ずっと画面を占め続けるからです。

    この記事で扱うこと

    PCとスマホで同じ機能の置き方が変わる理由、貼り付く要素の高さをどこまで削るか、そして「飛んだ先が隠れる」という副作用への対処。狭い画面での面積の取り合いの話です。

    PCとスマホで、余っているものが違う

    PCの画面では、本文の横に十分な余白があります。だから目次は右側に置けます。本文の面積を1ピクセルも削らずに、常に見えている状態を作れます。

    スマホには横の余白がありません。置けるのは本文の上か下だけです。そして上に貼り付ければ、その高さのぶん本文が押し出されます。

    余っているもの 目次の置き場所
    PC 横幅 右側に追従(本文は削られない)
    スマホ なし 上に追従(本文が削られる)

    同じ「追従する目次」でも、払っている代償が違います。PCでの成功をそのまま持ち込むと、スマホでは負担のほうが大きくなる可能性があります。

    最初の実装は、高すぎた

    もともとスマホ版の目次には、進捗バーと「読了まで/あと35%」の表示が縦に積まれ、その下に「目次(8項目)」の開閉ボタンがありました。これをそのまま貼り付けると、こうなります。

    画面上部が占められる高さ
    ヘッダー        57px
    目次バー        85px
    ────────────────────
    合計           142px
    
    iPhone SE の表示領域(667px)に対して 21%

    2割が常時埋まります。しかもスマホでは、画面の下端もブラウザのUIに取られています。実際に本文が見えている範囲は、思っているより狭いのです。

    縦に積むのをやめる

    減らせるものを探しました。表示している情報は3つです。

    要素 役割 削れるか
    「目次」の文字と開閉 触れることを伝える 削れない
    進捗バー どこまで来たかを示す 削れない
    残り%の文字 見通しを与える 削れない

    どれも消せません。消せないなら、並べ方を変えます。縦に積んでいたものを横一列にしました。

    変更後の並び
    [目次 ▸] ──────────── あと 35%
               (進捗バー)

    これで85pxが約40pxになりました。ヘッダーと合わせて約97px、本文が見える範囲は85%まで戻ります。情報は1つも減らしていません。

    削る前に、並べ替えを試す

    置く場所が足りないとき、最初に浮かぶのは「何を消すか」です。しかし消すと機能が減ります。同じ情報を、置ける形に合わせて並べ替えられないかを先に考えると、失わずに済むことがあります。

    実装:同じ部品を2通りに並べる

    進捗バーの部品には、並べ方を選べるようにしました。

    ReadingProgress.tsx(要点)
    layout?: "stacked" | "row";
    
    // 表示する部品は3つだけ。並べ方が2通りあるので、
    // 部品を変数に切り出してから並べ替える。
    const finishedLabel  = ( ... );
    const remainingLabel = ( ... );
    const bar            = ( ... );
    
    if (layout === "row") {
      return (
        <div className="flex items-center gap-2.5">
          <div className="min-w-0 flex-1">{bar}</div>
          {finished ? finishedLabel : remainingLabel}
        </div>
      );
    }

    ここで避けたかったのは、レイアウトごとに同じJSXを書き写すことです。書き写すと、表示内容を変えたときに片方だけ直し忘れます。部品を変数にしておけば、並べ替えても中身は1つのままです。

    飛んだ先が、バーの裏に隠れる

    実装して気づいた副作用です。

    目次のリンクを押すと、その見出しまでスクロールします。ところが貼り付いたバーの裏に見出しが潜り込んで見えなくなりました。ブラウザは「見出しを画面の一番上に持ってくる」ことしかしないので、上に何かが被さっていることを知りません。

    対処
    @media (max-width: 1023px) {
      .wp-content h2,
      .wp-content h3 {
        scroll-margin-top: 8.5rem;   /* ヘッダー + 目次バー + 余白 */
      }
    }

    scroll-margin-top は「スクロールで停止する位置を、この分だけ手前にずらす」指定です。PCには目次バーが無いので、幅の狭い画面だけに適用しています。1024pxという境目は、目次がサイドバーからバーに切り替わる位置に合わせました。

    押しても何も起きていないように見える

    この不具合が厄介なのは、スクロール自体は正しく動いていることです。見出しは画面外ではなく、バーの1段下に隠れているだけ。しかし使う側からは「押したのに反応しない」としか見えません。動作の正しさと、体験の正しさは別だという例です。

    開いたときの高さも止める

    もうひとつ。目次を開いたときの高さにも上限が要ります。

    見出しが8個ある記事だと、開いた目次は約340pxありました。ヘッダーと合わせて約400px。667pxの画面では、飛び先を選んでいる間、本文がほとんど見えません。

    上限を付ける
    max-h-[50vh] overflow-y-auto

    画面の半分までに制限し、それを超える場合は目次の中だけをスクロールさせます。これで、どんなに見出しが多い記事でも本文が半分は見えたままになります。

    記事が終われば、消える

    最後にひとつ、意図してそうしている挙動があります。

    この目次バーは記事本文のカードの中に置いてあります。position: sticky は親要素の範囲でしか効きません。だから記事本文が終わると、バーも一緒に流れて消えます。

    画面の最上端に固定する方法もありましたが、そうすると読み終えた後の「前後の記事」や「一覧へ戻る」を見ているときにも居座り続けます。もう使わないものが場所を取り続けるのは、狭い画面では特に邪魔です。

    今回の学び

    まず、PCでうまくいった置き方が、スマホでも良いとは限らないこと。PCの追従目次は本文の面積を削りませんが、スマホでは削ります。同じ機能でも、払う代償が違います。

    次に、消す前に並べ替えを試すこと。場所が足りないときに情報を削ると、機能が減ります。縦を横にするだけで、失わずに半分の高さに収まりました。

    そして、動作の正しさと体験の正しさは別だということ。目次リンクのスクロールは仕様どおり動いていましたが、使う側には「反応しない」と見えていました。正しく動いているかだけを確認していると、この種の問題は見つかりません。

    最後に、貼り付くものには終わりを決めておくこと。ずっと画面にあるものは、必要な間だけあればいい。記事の中でだけ生きて、読み終えたら消える——親要素の範囲で自然にそうなる形を選びました。

  • ページを10枚見ても「1」と数えられる問題

    ページを10枚見ても「1」と数えられる問題

    ページを10枚見た人も、1枚見て帰った人も、同じ「1ページビュー」として記録される。

    Next.jsのようにページを読み込み直さないサイトに計測を入れると、初期状態ではこうなります。数字は出ているのに、実態とまったく合っていません。今回はGoogleタグマネージャー(GTM)を挟んで、この問題を解いた記録です。

    この記事で扱うこと

    GTMを経由させる理由、コンテナとタグとトリガーの関係、そしてページ内遷移を計測に伝える仕組み。最後に、二重計上を防ぐための設定をひとつ入れています。ここが今回いちばん判断を要した部分でした。

    なぜ計測タグを直接貼らないのか

    GA4は、測定IDを含む数行をサイトに貼れば動きます。GTMを挟むと手順が増えます。それでも挟む理由は、ひとつだけです。

    計測の内容は必ず後から変わるからです。

    今はページビューだけで十分でも、そのうち「どのリンクが押されたか」「記事をどこまで読んだか」「連絡先を見た人は何人か」を知りたくなります。タグを直接書いていると、そのたびにコードを直し、ビルドし、デプロイすることになります。

    タグを直接貼る GTMを挟む
    最初の設置 数行貼るだけ コンテナ作成+タグ設定
    計測を1つ足す コード修正 → ビルド → デプロイ GTMの画面だけ
    設定を戻す コードを戻して再デプロイ 前のバージョンを公開し直す
    変更でサイトが壊れる可能性 ある ない

    最後の行が本質です。計測を変えるたびにデプロイするということは、計測の都合でサイトが壊れる機会を作っているということでもあります。本来関係のない2つのことが、同じ操作に結びついています。

    GTMを入れると、この2つが切り離せます。コードを触らずに計測を変えられる——これがGTMを挟む唯一にして最大の理由です。

    コンテナは既存アカウントの下に作った

    GTMもGA4と同じく入れ子構造で、アカウントの下にコンテナがあります。

    GTMの階層
    アカウント(ポートフォリオ)
      └ コンテナ(www.kisaku.site)   ← サイト1つに対して1つ
          ├ タグ      : 何を送るか
          ├ トリガー  : いつ送るか
          └ 変数      : 何の値を送るか

    今回は新しいアカウントを作らず、すでにあった「ポートフォリオ」アカウントの下にコンテナを追加しました。個人で管理するサイトが増えたとき、アカウントを分けるとどこに何があるか分からなくなるからです。同じ管理単位に並べておけば、一覧で見つかります。

    アカウントを分けるべきなのは、アクセス権を分けたいときだけです。アカウント単位でユーザーを招待するので、他人に片方だけ渡したい場合は分ける必要があります。逆にそういう予定がないなら、分ける理由はありません。

    作成すると GTM- から始まるコンテナIDが発行されます。これがサイト側に埋め込む値です。測定IDと同じで、HTMLに出力されるので秘密ではありません。

    タグとトリガーという考え方

    GTMの設定は、この2つの組み合わせで表されます。

    用語 意味 今回の例
    タグ 何を送るか GA4にページビューを送る
    トリガー いつ送るか ページ内で移動したとき

    「いつ」と「何を」を分けて持つのがGTMの設計です。同じタグを複数のトリガーで使い回せますし、同じトリガーで複数のタグを一斉に発火させることもできます。

    今回作ったのは、タグ2つとトリガー1つです。

    作成した構成
    タグ1 : GA4 - Google タグ
            種類     Google タグ
            タグID   G-872K3PN503
            トリガー Initialization - All Pages
            設定     send_page_view = false
    
    タグ2 : GA4 - page_view (SPA)
            種類       GA4 イベント
            イベント名 page_view
            トリガー   CE - spa_page_view
    
    トリガー : CE - spa_page_view
            種類       カスタム イベント
            イベント名 spa_page_view

    タグ1がGA4本体の読み込み、タグ2がページビューの送信です。役割が分かれているところが今回の要点になります。

    ページ内の移動を計測に伝える

    ここからが本題です。

    Next.jsはリンクを押してもページ全体を再読み込みしません。画面の中身だけを差し替えて、アドレスバーを書き換えます。ブラウザから見れば「同じページのまま」なので、計測タグは何も気づきません。

    そこで、アドレスが変わったことを自分で検知して知らせる部品をサイト側に置きました。

    RouteChangeTracker.tsx(要点)
    const pathname = usePathname();
    const searchParams = useSearchParams();
    
    useEffect(() => {
      if (!window.dataLayer) return;
    
      const query = searchParams.toString();
      const pagePath = query ? pathname + "?" + query : pathname;
    
      window.dataLayer.push({
        event: "spa_page_view",
        page_path: pagePath,
        page_title: document.title,
      });
    }, [pathname, searchParams]);
    
    return null;

    dataLayer はGTMが監視している配列です。ここに event を含むオブジェクトを積むと、GTM側で「カスタムイベント」として拾えます。サイトとGTMの間の唯一の連絡口だと思えば分かりやすいです。

    この部品は画面に何も表示しません。return null しています。副作用だけを持つコンポーネントです。

    Suspenseで包む必要がある

    useSearchParams を使う部品は、Reactの Suspense で囲まないとビルド時に警告が出ます。囲まないと、そのページ全体が「事前生成できない」扱いになり、訪問のたびにサーバーで組み立てられるようになります。速度改善のために事前生成を入れたばかりだったので、ここは見落とせませんでした。計測を足したせいでサイトが遅くなる、というのは本末転倒です。

    GTM側では、このイベント名を待ち受けるトリガーを作ります。トリガーの種類は「カスタム イベント」、イベント名に spa_page_view と入れるだけです。あとはそのトリガーで、イベント名 page_view のGA4イベントタグを発火させます。

    二重計上を止める

    ここで問題が起きます。

    Googleタグは、読み込まれた時点で自動的にページビューを1回送ります。一方、上の RouteChangeTracker は useEffect で動くので、最初に表示されたときにも一度発火します。

    場面 Googleタグの自動送信 spa_page_view 記録されるPV
    最初にページを開く 1 1 2
    リンクで次のページへ 0 1 1

    最初の1ページだけが二重に数えられます。すべてのページが2倍になるならまだ気づけますが、入口のページだけが多く見えるという歪み方をします。これは気づきにくく、しかも「トップページが人気」という誤った結論を導きます。

    解決方法は2つ考えられました。

    案 やること 問題
    初回だけ送らない フロント側で「初回マウントかどうか」を判定して除外する 判定の条件がコードの中に隠れる。読み込み直しとの区別も難しい
    自動送信を止める Googleタグの send_page_view を false にする 設定を1つ追加するだけ

    後者を選びました。Googleタグの「設定」→「構成パラメータ」に、以下を追加しています。

    Googleタグの構成パラメータ
    send_page_view : false

    これでGoogleタグはGA4を読み込むだけになり、ページビューを送るのは spa_page_view 経由の1本だけになります。

    発生源をひとつにする

    同じ数字が2か所から出てくる状態は、どちらが正しいかを常に考え続けることになります。片方を止めて発生源を1本にするほうが、計測を足すたびに悩まずに済みます。設定の数を減らすことより、考える回数を減らすことのほうが効きます。

    IDが無いときは何も出力しない

    サイト側の読み込み部分には、もうひとつ仕掛けを入れています。

    Analytics.tsx(要点)
    const GTM_ID = process.env.NEXT_PUBLIC_GTM_ID;
    
    export default function Analytics() {
      if (!GTM_ID) return null;
      // ... GTMの読み込み
    }

    環境変数が設定されていなければ、何も出力しません。これで2つのことが同時に解決します。

    ひとつは、IDを取得する前にデプロイしても壊れないこと。コードを先に入れておいて、あとから設定を足せます。もうひとつは、手元の開発中の操作が本番の数値に混ざらないことです。自分でページを何度も開き直す作業をしている最中に計測が動いていると、その分がそのまま記録されます。

    公開を忘れると何も起きない

    GTMには最後にひとつ落とし穴があります。

    タグを作って保存しただけでは、サイトには反映されません。右上の「公開」を押してはじめて配信されます。

    作業中の状態を「ワークスペース」と呼び、公開すると「バージョン」として固定されます。バージョンには名前と説明を付けられるので、今回は次のように残しました。

    公開したバージョン
    名前 : v1 GA4初期設定
    説明 : Googleタグ(G-872K3PN503、send_page_view=false)
           +SPA用GA4イベントpage_view(カスタムイベントspa_page_view)

    ここを空欄で公開してしまうと、半年後に見たときに何をしたバージョンなのか分かりません。過去のバージョンに戻せるのがGTMの利点ですが、戻す先が分からなければ意味がありません。説明を書くのは、その利点を使えるようにしておく作業です。

    今回の学び

    まず、速いサイトほど計測が壊れるということ。ページを読み込み直さない仕組みは体験としては良いのですが、計測の前提を静かに崩します。表示が速いことと、計測が正しいことは、別々に確かめる必要がありました。

    次に、数字は「出ている」と「合っている」が違うこと。タグを貼ればリアルタイムに自分のアクセスが出るので、動いているように見えます。しかし中身は初回だけ2倍で、遷移は数えていない状態でした。動作確認の基準を「表示されるか」ではなく「意図した回数か」に置く必要があります。

    そして、同じことを2か所で管理しないこと。二重計上の対処で、フロント側を賢くする案とGTM側で止める案がありました。前者は判定条件がコードの中に隠れます。設定として見える場所に置いたほうが、あとから読み解けると判断しました。